大判例

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東京高等裁判所 昭和50年(う)1161号 判決

被告人 佐々木修治 外二名

〔抄 録〕

そこで、原審記録ならびに当審における事実取調の結果に基づいて検討すると、右被告人両名は、原審公判廷において、事実はそのとおり間違いない旨陳述し、また、被告人佐々木修治の司法警察員に対する昭和四九年一〇月一九日付および同月二二日付ならびに検察官に対する各供述調書や被告人佐藤和幸の司法警察員に対する同年一一月二日付ならびに検察官に対する各供述調書において、それぞれ原判示コンゴーインコおよび鳥籠を盗むつもりであった旨一応目白しているが、それからさきこれをどうするつもりであったのかすなわちその経済的用法に従い利用ないし処分する意図があったのかどうか明らかでなく、却って右被告人佐々木の司法警察員に対する昭和四九年一〇月一九日付供述調書中には「かっぱらって人に売りつけるとか、自分で飼うということではない」旨の供述記載があり、同被告人は当審第一回及び第三回公判廷においても右記載と同趣旨の供述をし、また被告人佐藤も当審第二回公判廷において同趣旨の供述をしているのであって、なお、右インコおよび鳥籠の置いてあった現場が飲食店街の路上であって、原判示の午前一時ころにおいても各店がすべて閉店していたわけではなく人通りも絶えていなかったこと、右被告人両名が右インコおよび鳥籠を持去るに際し周囲を見まわしたり近くに人がいるかどうかを確かめたりする等の動作をした形跡も窺われないこと等を考え合わせると、右被告人両名とも、右インコを自己又は第三者のもとで飼育したり、それらを他に売却したり、インコを食用に供したり、又はその羽毛や鳥籠を利用するなどして、右インコ等の所有者を排除し、自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思、すなわち、いわゆる不法領得の意思があったものと認めるには不十分である。むしろ、右被告人両名が当審公判廷において弁明するとおり、右被告人両名は、外二名の者と飲食店で飲酒し酪酊のうえ、食事をする店を探したが、なかなか見当らず、何となくもやもやしたようなすっきりしない気持で歩いているうち、たまたま原判示「大統領」の軒下に右インコの置いてあるのを発見し、右インコにさわったりしているうちに、それを逃がせば、附近に人がおり、騒ぎにでもなれば右もやもやしたような気持がすっきりするかも知れないと思い、インコの足についていた鎖を手で引張って切り離そうとしたが、切断できなかったので、酔余いたずら半分でそれを逃がす目的で、同所から右インコを鳥籠と共に持ち出し直ちに追跡されるや約九〇メートル離れた原判示南丁張公園内に投げすてたものであることが認められ、結局右被告人両名の右インコ等に対する行為については、右被告人両名の共謀による器物損壊の事実を認定するのが相当である。そして、同人らが原審公判や捜査段階で右インコ等を盗んだ旨述べたのは、これまた当審で弁明するとおり、他人の物を黙って持って行けば、すべて泥棒すなわち窃盗になるものと単純に思込んでいたことに因るものと視ることができ、未だ右結論を左右するに足りない。

してみると、原判決が、これと異なり、右被告人両名を窃盗犯と認め、本件につき、窃盗犯人が逮逮されようとする際逮捕を免れるため、暴行を加え、よって傷害を負わせたという強盗致傷の事実を認定したのは、事実を誤認したものであり、その誤認は判決に影響することが明らかであるから、原判決中右被告人両名に関する部分は破棄を免れない。論旨は理由がある。

(吉田 金子 小林真)

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